中国工商管理機関が大量の“iPhone”ガスコンロを取締り—湖北省武漢市
2012年02月23日、チャイナフォトプレスによれば、湖北省武漢市の工商管理機関は、同市沿河大道にある2カ所の倉庫で681台のニセブランドのガスコンロを押収した。
このガスコンロは外箱に臨時のシルクスクリーン印刷がしてあり、中のガスコンロの安全保護装置もダミーで危険性が高い商品だ。しかも、倉庫内には“iPhone”の標示が付いているガスコンロが山積みになっていて、“アップル・チャイナ(苹果中国有限公司)”の合格証タグが下がっている。“アップル”はもちろんガスコンロ商品は販売していない。
2012/2/27 【レコードチャイナ】
新米編集長・浅見杳太郎、CEOの愛の商標記事1000本ノックをどうさばく?
こんにちは。iRify特許事務所・新米編集長の浅見です。
さて、ぼくの主なお仕事は、商標をはじめとした知財にまつわる記事を書いて、みなさんにお届けすることです。そして、少しでもみなさんのためになる記事をお届けするために、常に新しい情報を敏感にキャッチし続けなければなりません。それは、とても大変なことのように思えます。しかし、ぼくはこのiRify特許事務所にいて、今まで一度もそのことで苦労したことはありません。
なぜならば、ぼくには彦田さんがついているからです。
彦田さんはiRifyのCEO(最高経営責任者)です。元・バリバリの高校球児で、ポジションはキャッチャー。今なお、そのポジション特有の広い視野と統率力、それに大きい声は衰えることなく、情報キャッチャーとして知財の“イマ”を的確に捉え、ぼくに愛のノックを放ってくれています。多い日は、1日2、3本の記事ネタが、カキーンとぼくの方に飛ばされてきます。「オーライオーライ」とぼくはそれを華麗にキャッチします。というのはウソで、泥まみれになりながら、無様にその打球に追いすがるばかりです。
彦田さん、ぼくは今はこんなんでも、いつか目指します、知財の星!さあ、今回も泥臭くいってみましょうか。中国の商標トラブルや模造品のあれやこれやです。
ばっちこーい!
ここまでくると、もはや画期的
—アップル商標を狙い撃ち! 度肝を抜く中国商品
アップルのiPad(アイパッド)、iPhone(アイフォーン)が、中国で商標トラブルに巻き込まれていることは、みなさんもお聞き及びのことと思います。アップルvs.中国の商標紛争はもはや泥沼の様相を呈していて、あらためて中国ビジネスのシビアさを思い知らされることになりました。
そんなアップルの商標権騒動の真っ只中で、さらにiPhone商標を大胆に無断使用した中国の“ある商品”が発見されたのです。なんというか…もう、画期的なんです、発想が。
コンロの明日を切り拓く?—「iPhoneガスコンロ」大量発見!
2012年02月、湖北省武漢市にある業者の倉庫で、681台にも及ぶ大量のガスコンロが押収されました。そのガスコンロには、おなじみのアップルとiPhoneのロゴが入っています。
iPhoneとありますが、タッチパネルや電話機能はなさそうです。どう好意的に見ても、ただの一口ガスコンロに見えます。いや、これはもう、完全にただのガスコンロです。
ごていねいにも合格証のタグまで付けられています。アップル・チャイナが合格認定しているとのことですが、もちろん、本場のアップルはガスコンロなんて販売していません。
これに対しては、同じ中国の人たちからもネットで皮肉なコメントが寄せられているもよう。
—「Siri(音声認識アプリ)搭載なら買うよ」
…そうですね。Siri搭載ならすごいですね。ぼくも買います(値段によるけど)。だって、「とろ火!」ってガスコンロに話しかければ、音声認識して、とろ火でコトコトやってくれるわけですよね? あはは、すごい。
でも実際は、夢の「iPhoneコンロ」はただの不良品でしかありませんでした。登録商標を不正に使用しているだけでなく、国の安全基準すら満たしていないとのこと。ちょっと残念です。
iPhone商標にただ乗り—“低反発枕”に“ツボ押し器”?
色々調べてみますと、ガスコンロだけじゃありませんでした。次から次へと、出るわ出るわ…。中国のメーカーって、何をおいても、まずアップルの商標をつけたがる傾向にあるみたいですね。
中国ショッピングサイト「タオバオ(淘宝)」には、「iPhone4S」という“低反発枕(に見えるモノ)”が売り出されていたといいます。なんと、価格は8861.66元(約10万6500円)! た、高いっ!枕なのに、超ハイスペックで、「通信形式:GMS、Wi-Fi、カメラ:800万画素、CPU:デュアルコアCPU、ディスプレイ:960 x 640ピクセル、ワイドスクリーンマルチタッチディスプレイ」とのこと。…そりゃ、高いわけです。どこに液晶があるんだろう??
さらに、「iPhone5」として、“ツボ押しマッサージ器(に見えるモノ)”も出品されていました。価格は2500元/約3万円! う〜ん、高いよ。
これもやっぱりハイスペックで、「カメラ:500万画素、OS:その他、通信方式:GMS」だそうです。不肖、ぼくには、入浴時にコロコロやるマッサージ器具にしか見えません。
さらにさらに…、ただの机に見える“idesk2”、ちょっと高級感漂うシャンプー“iShampo(「o」は1つです)”、ファンシーな色使いの“iPhone5スニーカー”などなど。不思議な不思議な品揃えです。
スケールが違う!アップルストアの店舗ごと偽造
しかし、まだまだ、こんなもんじゃありません。中国雲南省昆明では、なんと店舗ごとニセモノが造られていたのですよ(2011年7月発覚)!
その偽アップルストアは、規模・質・情熱ともに今までのフェイクとは格が違います。そこで働く店員ですら、当時は故スティーブ・ジョブズ氏の下で働いていると信じ込んでいたというのですから。
たしかにこの偽アップルストアは、一見するとホンモノのように見えたといいます。しかし、細部を見るとやっぱり怪しいところが…。壁の塗装が雑だったり、階段が安っぽかったり。最たるは、看板の「Apple Stoer」の表記!
Stoer? なんて読むんでしょう、これ?
わざとなのか、単純に間違えたのか、本家「Apple Store」とは表記を変えてきているところに、老獪さを感じます。いや、稚拙さかな。いやはや。
国際基準をダイナミックに逸脱
—ディズニーすら敵に回す奔放なニセモノ文化
さてさて、以上のお話からも、商標権など知的財産権に対する中国の認識は、国際基準から大きく外れていることがうかがえますよね。
「石景山遊楽園」って聞いたことありませんか?日本では2007年5月に報道されて以来、ミッキーマウスなどの偽者キャラクターが数多くいる「パクり遊園地」として、とても有名になりましたよね。
遊園地自体もディズニーランドを模した造りで、シンデレラ城のようなお城もあります。これに対し、当然、ウォルトディズニー社は著作権を侵害されたとして告発。アメリカ政府も「知的財産権の保護が不十分」として、中国を世界貿易機関(WTO)に提訴しています。
◎2007年当時、中国知的産権研究会の張志峰氏はこう言っています。
—「中国には著作権というものに対する認識がない。海賊版を使用することを悪いと人々は思っていない」
◎また、著作権を侵害しているDVDを販売する小売店の経営者も言います。
—「私たちは誰かから盗んでいるわけではない。顧客のほとんどは、“本物”は高すぎるから買えないと言う。だから、彼らと私たちのビジネスには何の関係もないんだ」(AFP)
もし、この5年前の感覚を、今だに中国の人たちが引きずっているとしたら…。アップル商標に乗っかった枕やシャンプーなどが、堂々と市場に出てきてしまうのも頷けますよね。
…さて、今回はここまで。語りつくせぬワンダーランド、おとぎ話の続きは、後編へと譲ることにいたしましょう。
次回は、アメリカのプロバスケットボールの元スター選手「マイケル・ジョーダン」や、フランスの有名ブランド「エルメス」が、この中国で巻き込まれた商標トラブルについて、さらりとお届けしたいと思います。
それでは、今日のところは、ごきげんよう。
新米編集長・浅見杳太郎、頓首。