ロシア隕石落下―、 ネーミングに活かし商標登録出願へ

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※ 写真はイメージです。

覚えていますか、あの隕石落下の事件を?

こんにちは。

厳しい暑さが続きますが、体調など崩されていないでしょうか?

さて、今回も目に付いた商標関連のニュースについて、お話ししていきたいと思います。今年の2月のことですが、ロシアのチェリャビンスク州に隕石が落下しました。覚えていますでしょうか?あの衝撃波の生々しい映像の印象は、きっとみなさんの記憶の中にも、鮮明に残っているものと思います。
今回は、その一件にまつわる、ネーミングと商標登録に関する興味深いニュースについて眺めていきたいと思います。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201303/2013031500649(時事ドットコム)

チェリャビンスク隕石落下の衝撃

2月15日に地球の大気圏に突入した小惑星の元々の大きさは、直径17m、質量1万トンとされています(分解直前の直径は数mから15m)。また、専門機関の分析の結果、その小惑星は太陽系とほぼ同じ約46億年前に生成されたものらしく、さらに断面の解析から、3,000万年前から5,000万年前に何らかの衝突の痕跡を印した跡があることが判明したといいます。

なるほど。ということは、その小惑星は大元の天体から分かれた、「破片」のようなものだったのかもしれませんね。その小さな「破片」がぶつかっただけでも、地球上ではこの大騒動。宇宙のダイナミックさには、つくづく驚かされます。

隕石のネーミングについては、当初、複数の案があったようですが、のちに最も広範囲に隕石の破片が見つかった地域がチェリャビンスク州であったことが判明したため、ロシア科学アカデミーの地球化学・分析化学研究所によって、チェリャビンスクの名称で国際隕石学会に登録申請されたとのことです。そうして、3月18日にその名称で、正式に学会への登録を果たしたというわけですね。
(注)商標登録が認められたわけではありません。

実際の被害の模様が、市民らによって撮影された映像などにより目に見える形でリアルに提供されたこの事件は、見る人によっては、あのブルース・ウィリスの「アルマゲドン」を彷彿させるものだったのではないでしょうか。

“事件”をネーミングし、商標登録出願へ

悠久の宇宙を旅してきた「チェリャビンスク隕石」の、長い長い物語―。そして、地球衝突という、唐突な旅の終わり。その大きなインパクトは、わたしたちに宇宙や自然に対する、ある種神秘的な想念を惹起させるのに十分なものでした。

さて、その一方で、ビジネス面では隕石落下の直後から、インターネット上では“隕石の破片”の売買が行われていました。さらに、にわかに有名になった「チェリャビンスク隕石」という名称を商標登録しようと、地元の企業のみならず、モスクワやサンクトペテルブルグなど大都市の企業も躍起になっているそうなのです。

時事通信は、ある企業家からの「香水」開発の提案に対して、チェリャビンスク市長が積極的な姿勢を示し、協力する約束を交わしたことを報じています。

隕石の衝突落下事件は広範囲な物的・人的被害をもたらしました。しかし、ロシアの企業家たちはたくましかったですね。普通であれば、その被害によって、市民生活や経済活動の停滞が余儀なくされるところですが、そのマイナス面から見事に発想の転換を図っています。多くの被害を引き起こした隕石を“宇宙からの贈り物”と見なして、積極的にビジネスに活用すべく、有名になったその隕石の名前を最大限に生かすために商標登録を目指す―。転んでもただでは起きない、この姿勢。むしろ経済の活性化に向けて、前向きなスタートを切ったような印象さえ受けませんか?

ロシア人のバイタリティ

隕石の名称を商標登録しようというこれらの動きですが、隕石が落下してひと月足らずの間で、すでに起こっていたことなんですよね。こういったロシア人のビジネスへの姿勢を見て、私はある種の強烈なバイタリティを感じずにはいられませんでした。

ところで、日本人から見るロシア人のイメージとは、一体どういうものでしょう?

例えば、文学・芸術から想起されるロシア人像は、繊細な心性を持った民族、といったイメージでしょうか。ドストエフスキーやソルジェニーツィンといった世界的文豪たちの心の深奥を抉り出すような心理描写や、「惑星ソラリス」の映画監督タルコフスキーの独特の陰影を備えた絵画的な映像スタイルを思い出すと、うん、そうかもしれないなあと頷けるような気がします。

また、一方で、北寒の大地に太古から根を張って、たくましく生き抜いてきた“ず太い”白人系スラブ民族というイメージも頭に浮かびます。劇的な共産革命から、さらに劇的に市場経済国家へと変革を成し遂げた、「大ロシア」としての雄々しい姿ですね。市場経済というシステムを採用してから早や20数年。幾度となく経済・社会のシステムに修正を施しながら、“眠れる北の巨人”は今や、世界8位のGDPを誇るまでになっています。

繊細にして、パワフル―。
これはあくまでも、私個人が抱くロシア人のイメージですが、みなさんは、どういった印象を持たれているでしょうか。

日本国内にもあるネーミングのヒント

バッター シルエット

私は「チェリャビンスク隕石」というネーミングに関して、またその名称を商標登録しようというロシアの企業家たちの動きに関して、大きな興味と感心を持って見守っています。見習うべきところも、たくさんあるのではないでしょうか。

さて、ところで、どんな香水が出来上がるんでしょう? 「時事ドットコム」によれば、「鉄や石を基調」とする香水の開発が計画されていると言いますが。隕石の名称がパッケージに付されて、フタを開ければ「鉄や石」の匂い…、不思議な香水が出来上がりそうです。少なくとも、面白いネーミングの商品として、ちょっとした話題にはなりそうですね。

隕石の名称が商標登録出願されたという今回のニュース。本当に夢のあるお話でした。

それでは、くるっと日本国内に目を転じてみましょう。おや、よく眺めれば、日本にもそれぞれの地域によって、独自の食材や土産品、観光スポット、それに、歴史的建造物群やその土地に伝わる昔話など、ネーミングへのさまざまなヒントが転がっているではないですか。

今回のロシアの商標登録出願の件では、隕石という自然現象からネーミングの発想を得たわけですが、発想の元はそれこそ無数にあるんですよね。日本各地にある有形無形の“財産”を改めてじっくり眺めてみると、ネーミングへの良いヒントが見つかるかもしれません。

そうしてネーミングされた斬新な名称を商標登録し、ブランドを育て―。企業だけでなく自治体や個人まで、夢が膨らみますね。

では、また、次回お会いしましょう。

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