青森の“風間浦鮟鱇”が地域団体商標登録に!

風間浦鮟鱇
※ イラストはイメージです。

こんにちは!商標など知財を語るにおいては、未熟な点も多いかと思いますが、日々商標の知識を吸収しつつ、みなさまに商標ネタをお届けしていきます!

さてさて、冬の本格的な寒さが感じられる今日この頃、鍋など無性に食べたくなってきませんか?今回は鮟鱇(あんこう)鍋で有名な、鮟鱇にまつわる商標のお話です。

青森県内で6件目!風間浦鮟鱇が地域団体商標に登録

2014年9月、青森県の風間浦村地域の名産「風間浦鮟鱇」が、地域団体商標「風間浦鮟鱇」として、特許庁に商標登録されました(商標登録第5699337号)。
「地域団体商標」というのは、主に“地域名”と“商品・サービス名(普通名称)”を組み合わされた文字のみで構成される商標のことで、例をあげれば、三重県の名産「松阪牛」や京都府の名産「宇治茶」、あるいは宮城県の名産「仙台味噌」などが地域団体商標として商標登録されていることで有名です。

青森県の団体が保有している地域団体商標の商標権(登録商標)は、これまで、①田子町の「たっこにんにく」、②弘前市の嶽高原で取れる「嶽きみ」、③大間町で水揚げされる「大間まぐろ」、④大鰐町の「大鰐温泉もやし」、⑤野辺地町界隈で栽培される「野辺地葉つきこかぶ」の5件でした。
そして、今回「風間浦鮟鱇」が商標登録されたことで、6件目の地域団体商標の商標権を取得したことになります。

刺身でも食べられる!風間浦鮟鱇の特徴とは?

鮟鱇(あんこう)というと、本場は茨城県の水戸だという印象が強いのですが、実は日本各地で水揚げされており、2014年現在の水揚げ量日本一は、山口県の下関市だったりします。そんな広い地域で水揚げされている鮟鱇ですが、青森県の風間浦地域で獲れる鮟鱇は他の地域で獲れる鮟鱇にはない特徴があるのです。
それは、茨城のように底曳網漁でゴッソリ獲るのではなく、伝統の延縄や空釣りといった漁法で鮟鱇を生きたまま水揚げすることからはじまります。そして、その水揚げされた鮟鱇を丁寧に扱うことで、風間浦地域で獲れた鮟鱇は、身はもちろんの事、あん肝も刺身で食べられるようになり、鮮度が高いとの評価を受けているのです。
この「風間浦鮟鱇」は、風間浦地域の名産としてその名が広まり、観光客が遠くからわざわざ鮟鱇料理を目当てに訪れるようにもなっています。

風間浦鮟鱇ブランド化計画始動!

そんな風間浦鮟鱇を地域ブランドとして活用し、そのブランド力を地域振興に役立てようという計画が立ち上がったのは、5年ほど前だったそうです。
風間浦地区は、「ゆかい村鮟鱇ブランド化戦略会議」という組織を立ち上げ、風間浦鮟鱇のブランド化に力を入れました。 もともと地域ブランド商品の商標権の取得に関心の高い青森県は、こうした風間浦地区の活動に協力的で、風間浦鮟鱇の地域団体商標の登録を積極的にバックアップしたようです。
「風間浦鮟鱇まつり」なるイベントを開催して、鮟鱇料理をふるまったりして観光客を呼び込み、風間浦鮟鱇の名称を広めようとする一方で、風間浦鮟鱇が地域団体商標として、商標登録される事を目指しました。

地域団体商標の登録方法とそのメリットとは?

「地域団体商標」とは、主に、「地域名」と「商品・サービスの普通名称」を普通に用いられる方法で表示した文字のみで構成した商標をいいます。

「地域団体商標」の登録方法については、まず、特許庁へ商標登録の出願手続きを行い、審査官に審査をしてもらいます。そして、通常の商標登録の条件の他に、地域団体商標としての登録条件も満たせば、登録査定が得られ、さらに、登録料を納付することで地域団体商標として登録され、商標権の設定がされることになります。

地域団体商標を登録し、商標権を得ると大きなメリットがあります。
例えば、地域団体商標登録を得たことで、新聞・TV・雑誌などの各種メディアに取り上げられれば、地域ブランドとしての知名度を向上させることができ、イベントや観光の集客アップに繋げることができます。
また、企業努力による高い品質をもつ商品に登録商標(ブランド)を表示することで、他の商品と差別化できる価値が認識されやすくなり、さらには信用の獲得にも大きく貢献します。
そして、商標登録することによって、粗悪な模倣品に対しても法的処置が格段に取りやすくなり、地域ブランドの信用を保護することもできるのです。

登録が難しかった地域ブランドの登録。法改正でハードルが下がった?

少し前まで地域ブランドの商標を登録するには、厳しい条件がありました。
単なる「地域名」と「商品名(サービス名)」の文字の組み合わせのみでは、商標登録を認めてもらえなかったのです。
というのも、①その組み合わせた文字(地域ブランドの商標)が「全国的な知名度」を獲得していない限り、市場で商品(サービス)の出所(生産者など)を表示しているとはいえず、他の同種の商品(サービス)と区別するための標識とならない。②同業者間で頻繁に使用される文字の組み合わせでもあるため、一人に独占使用権を与える商標制度にはなじまない、と考えられていたからでした。

しかし、地域ブランドの商標の保護ニーズが高まったことがきっかけで、2005年になって商標法が改正され、まだ全国的な知名度を獲得していない地域ブランドの商標でも、一定の登録条件をクリアすれば、「地域団体商標」として商標登録が認められる地域団体商標制度がスタートしました。

経産省が後押しする地域振興!地域団体商標の出願可能団体の条件を緩和

さらに2014年になって、経産省が、地域団体商標を出願できる団体の条件を緩和したのです。これまで、地域団体商標を出願できる団体の条件は、農業協同組合や漁業協同組合といった、特定の法律で定められた事業協同組合と、それに相当する外国の法人のみとされていました。
しかし、地域づくり・町おこしの推進力ともなる地域ブランドの商標の保護ニーズがさらに高まったことで、地域団体商標制度が見直され、地域団体商標を出願できる団体の条件が大幅に緩和されたのです。
具体的には、2014年8月1日からは、商工会や商工会議所またはNPO法人やそれに相当する外国の法人も地域団体商標制度を利用し、地域団体商標を出願することが可能になりました。

ブランド力の拡大には「地域団体商標登録」が有効!手続きは弁理士に相談を!

「風間浦鮟鱇」が地域団体商標として登録されたのは、2014年9月5日です。
こうした情報は、特許庁の「地域団体商標登録案件紹介」に掲載されるだけではなく、各種メディアにも取り上げられやすくなります。
その場合、一躍知名度を向上させることができ、高い品質が伴えば信用を獲得することにつながり、結果としてブランド力をアップさせることができるのです。

ただ、「風間浦鮟鱇」の地域団体商標は、出願手続きをしたのが2013年の3月で、商標登録されたのは、2014年9月5日です。つまり、商標の出願から登録までには、1年以上の期間がかかっていることになります。
こうした事例は珍しくなく、地域団体商標を登録するには、通常の商標登録と比べても複雑な手続きが求められ、結果的に多くの時間や手間がかかってしまうことが多いのです。
地域団体商標の出願を真剣にお考えの場合は、複雑な手続きにも強い専門家の弁理士に相談し、アドバイスを受けることをお勧めします。

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