「面白い恋人」訴訟に新たな動き

<「面白い恋人」訴訟>石屋製菓側が1.2億円賠償請求

北海道を代表する土産菓子「白い恋人」を製造・販売する石屋製菓(本社・札幌市西区)が、商標権を侵害されたとして、吉本興業(同・大阪市)などに菓子「面白い恋人」の販売差し止めを求めた訴訟の第1回口頭弁論が25日、札幌地裁(浅井憲裁判長)であった。

石屋製菓側は計1億2000万円の損害賠償を新たに請求。吉本興業側は大阪地裁への移送を申し立てた。請求に対する認否は明らかにしなかった。移送の可否は札幌地裁が近く、双方の意見を聞いて判断する。

2012/1/25 20:29 【毎日新聞】

iRify特許事務所・加藤恭所長弁理士が「やじうまテレビ」(テレビ朝日)に出演

こんにちは、iRify特許事務所・所長弁理士の加藤です。

12年1月25日、弊所にテレビ朝日・「やじうまテレビ!」の取材陣がやって来ました。この「商標NOW」でも以前に取り上げた「面白い恋人」訴訟に新たな動きがあったため、話が聞きたいとのことでした。

世間でも注目されている商標権侵害に関する大きな事件ですので、進展をチェックしていきましょう。

事の発端から賠償請求まで―「面白い恋人」訴訟を少し復習

吉本興業側の「面白い恋人」
◆吉本興業子会社が商品化―ヒット商品に

「面白い恋人」の製品化が企画されたのは09年の時のことでした。
前年はあのリーマン・ショックがあった年。その大不況を吹き飛ばそうと、吉本興業の子会社・よしもとクリエイティブ・エージェンシーが1年間の開発期間を経て、2010年7月に販売を開始しました。

そして、「面白い恋人」はツイッターなどを通じてみるみる知名度を上げていきます。そして、その“大阪っぽさ”が受けたのか、発売から1年間で累計60万個を売り上げるまでのヒット商品になったのです。

◆「白い恋人」石屋製菓が提訴

しかし、11年11月、北海道の人気菓子「白い恋人」を製造・販売する石屋製菓が、吉本興業とその子会社を訴えました。「面白い恋人」が石屋製菓の「白い恋人」の商標権を侵害しているとして、販売の差し止めなどを求めたものです。

そして、1月25日、第1回口頭弁論が開かれました。

第1回口頭弁論

第1回口頭弁論は、札幌地裁(浅井憲裁判長)で開かれました。
訴状で石屋製菓側は、「長年かけて築き上げたブランドにただ乗りしている」と主張。

ライセンス料相当として「面白い恋人」の売り上げの2割分の賠償を請求しました。 「面白い恋人」は年間で6億円売れたとメディアの報道などから推定され、その賠償請求額は1.2億円に及んでいます。

一方、吉本興業サイドは大阪地裁への移送を申し立てました。また弁論終了後には、「具体的な主張は次回以降に行うが、話し合いによる円満な解決を希望している」とのコメントも出しています。

争点のポイントは商標が“似ている”か“似ていない”か

石屋製菓が吉本興業を提訴

以前の「商標NOW」(詳細は下記「関連記事」より)でも解説しましたが、もう一度、この訴訟の争点を整理してみましょう。

◆争点のポイントは、商標の類否です。

簡単に言えば、商標として“似ている”か“似ていない”かですね。それは、3つの要素から総合的に判断していきます。

3つの要素というのは、

  1. 見た目(外観)……デザインや包装など
  2. 意味合い(観念)…想起させるイメージなど
  3. 音の響き(呼称)…音の数や聞き分けやすいかなど

です。

特に、3つ目の「音の響き」が類否の判断では大きなウエイトを占めます。

◆「白い恋人」の著名性も類否判断の重要なファクター

「白い恋人」は定番のお土産として、とても有名ですよね。みなさんも少なくとも聞いたことくらいはあるのではないでしょうか?

この有名さも“似ている”“似ていない”の判断に大きく影響を及ぼします。
「白い恋人」が有名だからこそ、その類似範囲も拡がり、通常では似ていないと判断されるような商標でも、似ていると見なされることもありうるのです。

大阪のパロディーお土産―笑い話じゃ済まされない?

大阪には他の都市に比べて、しゃれっ気のあるパロディーお土産が多いという印象はありませんか?データ的な裏付けがあっての話ではなく、あくまでも印象の上での話です。

これも「笑い」の文化が根付いた大阪に対する、ひとつのイメージですね。商魂と笑いモットーとする大阪ならば、パロディー商品も茶目っ気のきいた商売のひとつ、という笑い話。

とはいっても、商標法上では話は別です。
裁判で商標の類否に関して、どのような判断がなされるのか。「面白い恋人」は「白い恋人」の商標権を侵害したのか。これからの司法の判断に注目していきましょう。

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