著作権侵害でMegaupload摘発

ファイル共有のMegaupload摘発、ハッカーが反撃

著作権などを無視した様々なデータ、ソフトウェアや映像、音楽メディアが多くアップロードされていたことで知られるMegauploadが違法行為を行ったとして米時間の19日木曜に強制的に閉鎖され、関係者7人が逮捕された。(中略)

この摘発が行われたタイミングは、米議会で審議が進められていた著作権保護法案、略称SOPAとPIPAに対して抗議活動が大々的に行われた1月18日の翌日だったことから、関連を疑う見方も強い。この閉鎖を受けて、ハッカー集団として有名なAnonymousが米司法省、アメリカ映画協会、米音楽著作権協会、Universal Music Group、ベルギー反海賊盤連盟などのウェブサイトを攻撃したと宣言。米司法省のサイトは復旧しているものの、そのほかのサイトには日本時間21日現在もアクセスできない状態が続いている。

2012/1/21 15:10【Yahoo!ニュース】

Megaupload

前回に引き続き、今回の「商標登録NOW」でも、知的財産がらみということで、著作権について考えていきたいと思います。

さて、先の「商標登録NOW」では、著作物であるアニメーション作品「ガンダムAGE」を、バンダイナムコホールディングスがネット上で無料配信したというトピックを紹介しました。
これは海賊版との取っ組み合いを回避して、むしろその波及力を逆手に取り、自社の“広告塔”にしてしまおうというバンダイナムコの巧みな戦略でした。

しかし、今回の「商標登録NOW」で取り上げる「Megaupload(メガアップロード)摘発」の一件は、利権者と違反者の真っ向からのぶつかり合いです。

―オンラインでの、「知的財産の保護」と「言論・表現の自由」。
今、アメリカ合衆国連邦政府からハッカー集団まで入り乱れての大問題に発展しています。これからのクラウドサービスは、一体どうなっていくのでしょう?
さあ、一緒に考えていきましょう。

Megaupload摘発の背景―Megauploadって?

アメリカ時間の12年1月19日に、音楽や映像メディアなどを数多くアップロードしていたMegauploadが違法行為を行ったとして、強制的に閉鎖、関係者7人が逮捕されるという事件が起こりました。
この逮捕劇は、アメリカ連邦政府が各国警察の協力を得て行われたものです。

◆Megauploadってどんなサービスをしているの?

Megauploadはオンラインストレージサービスの大手です。
「オンラインストレージサービス」というのは、クラウドを利用してファイルを保存し、それを他のユーザーと共有していこう、というサービスのことです。
無料で2GBまで、有料ならば無制限の容量で利用できます。

Megauploadは、ニュージーランド在住のオランダ人、キム・ドットコム氏が2005年に設立。拠点は香港にありますが、サーバーはアメリカにあるため、今回はアメリカの著作権法が適用されました。

それにしても、オンラインストレージ業界には他にも数多くの会社があるというのに、今なぜMegauploadだけが閉鎖されたのでしょう?

「Megaupload」の画面
◆著作権侵害を助長する「サイバーロッカー」

Megauploadは確かにオンラインストレージのひとつではありますが、海外では「サイバーロッカー」と呼ばれ、一般的なオンラインストレージとは区別されているようです。

そこには著作権を侵害するファイルが数多くアップロードされていて、「サイバーロッカー」という響きには、”違法ファイルの取引場“としてのニュアンスが込められています。

◆全ネットユーザー≒違法ダウンローダー??

「サイバーロッカー」を利用すれば、ブラウザにアクセスするだけで簡単に違法ファイルをダウンロードできてしまえます。
今や、ファイル共有ソフトを通さなくても、クリックひとつで違法ファイルを手に入れられる環境にあるのです。

つまり、すべてのネットユーザーが、いともたやすく、自覚的であろうとなかろうと、著作権を侵害しうる立場に立たされているということです。

◆膨れ上がったMegaupload

訴状によると、Megauploadは「1日のビジター数5000万人、インターネットの全トラフィックの4%を遣うメガサイト」にまで膨れ上がっていたとのことです。
その成長のサイクルを簡単に眺めると、以下のようだといいます。

【Megauploadをはじめとしたサイバーロッカーの成長サイクル】

たくさんダウンロードされたファイルを提供したアップローダーには、インセンティブ(報酬)が支払われる。
     ↓
アップローダーは報酬目当てに魅力的なファイルを次々とアップする。
     ↓
魅力的なファイルをダウンロードするために、無料会員はお金を払って有料会員になる。
(無料会員にはあらかじめ使用に制限をかけておき、ストレスを与えておくのもポイント)
     ↓
アップローダーはさらにダウンロード数を稼ぎたいから、自身のブログなりにリンクを貼り、さかんに宣伝する。
     ↓
サイバーロッカーが成長、乱立する。

…人の心理をとても巧みについていますね。
Megauploadは広告などで2500万ドル(約19億円)、有料会員から1億5000万ドル(約116億円)、合わせて1億7500万ドル(約135億円)以上の利益を上げていました(訴状より)。

さらに、司法省とFBIによると、Megauploadの著作権侵害による被害総額は5億ドル(約385億円)に上るといいます。

Megaupload、今なぜ摘発? めまぐるしい著作権抗争

FBIによる海賊版警告の文書

Megauploadのサービスが強制閉鎖となったのは、新しいオンライン著作権保護法案(SOPA/PIPA)への抗議活動(ウィキペディアによる24時間サービス停止など)が大々的に繰り広げられた翌日のことでした。
このタイミングは奇しくもと言うべきでしょうか? 関連を疑う見方も強まっています。

ちなみに、SOPA(Stop Online Piracy Act/オンライン海賊行為防止法案)とは、2011年10月にアメリカ下院に提案された法案で、オンラインにおける著作権侵害行為を防止することを目的にしています。
著作権侵害コンテンツを含むサイトに対して、アクセス遮断、解釈によってはサイト全停止をも命令できるという強い規制力を持った法案です。

この法案に関しては報道されてすぐに、「ネット検閲である」「インターネットを殺すものだ」という意見がネット上に飛び交いました。
ここ数カ月、アメリカのネット業界でも大きな話題になり続けています。

クラウドに暗雲―ファイル共有サービスにかげり?

今回の摘発事件で、サイバーロッカーの隆盛にはかげりが兆してきたように思えます。
「オンラインファイル共有の1つの時代が終わる」ともささやかれているのです。

今後、ますます規制が進むとすると、そのほかのファイル共有サービスまでもが萎縮し始める可能性がありますね。
そうしてサービスを差し控えるようになると、第一に犠牲になるのは、今まで合法的に使っていたユーザーです。

著作権を無視してファイルを違法に拡散させるサイバーロッカーの存在は、決して黙認することはできません。とはいえ、過剰な規制もネット上での活発なビジネス、そして自由な表現活動などを著しく減退させるのです。

「表現・言論の自由」か、「知的財産権の保護」か。
そういった極端な二者択一に走るのではなく、中庸の道を見つけ出せればよいと願っています。

今回のMegauploadの摘発は、ネットと知的財産権の関係性を根本から問う大きな事件でした。
私たちの日常にも深く関わってくる問題ですので、これからも注視していきましょう。

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