香り、音、触感—『新しい商標』へ向けて法改正目指す特許庁

香り、音、触感も商標の保護対象 特許庁、来年法改正へ

企業がにおいや音、触感などを商標として登録できるようにするため、特許庁は25日、商標法を改正する方針を決めた。欧米では登録できるが、国内では認められておらず、企業から法改正を求められていた。2013年の通常国会に改正案を提出する。

経済の国際化が進むなかで、幅広い商標を認める国際的な動きに合わせる。法改正されれば、国内で登録ができるだけでなく、一度の手続きで同時に複数国に商標を出願できる「国際登録制度」も使える。

国内でこれまで認められている商標は、文字やマーク、立体的な形などが中心だった。しかし、欧米ではにおいや音、動き、触感、色彩などを登録できる国が多い。日本企業でも、久光製薬がサロンパスの香りで知られるサリチル酸メチルとL―メントールの含まれた薬のにおいを米国で商標登録している。

2012/6/26 【朝日新聞デジタル】

iRify特許事務所・河合光一弁理士

こんにちは。
iRify特許事務所・弁理士の河合光一です。

今回の『商標NOW』では、弊所の所長弁理士・加藤に代わり、私、河合が解説をさせていただきます。

今回に限らず、今後はたびたび、この『商標NOW』にて、筆を執らせていただくことになると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回は『新しいタイプの商標』についての話題です。

現行の審査方法ではカバーしきれない『新しい商標』

従来の「外観(見た目)」という判断基準が通用しない「音」

この商標法の改正案が国会を通過すれば、保護される商標の種類が増えるわけですが、実際に運用するまでにはまだまだ壁があります。

商標法では、商標とは…

「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であって、業として商品を生産する者がその商品について使用をするもの」

などとされています。

しかし、法改正されれば、当然この商標の定義も変わることになるでしょう。
そして、定義が変わることの影響は、決して少なくないと思われます。

例えば「音」が商標の保護対象となった場合には、現在の商標の審査方法をそのまま当てはめることはできなくなります。

現在の審査は、主として「外観(見た目)」、「称呼(発音)」、「観念(意味・イメージ)」を総合的に判断して行われています。
ところが、「音」の商標には少なくとも「外観(見た目)」という要素がありません。

つまり、新たな判断基準が必要となるわけですね。

『新しい商標』に対するユーザー側のニーズ・認識は?

特許庁が目指す法改正―どうなる?

さらに、今の日本人が「音」を頼りに商品やサービスを選別していることはほとんどないと思われます。

「音」が商標として認識されていない、というわけです。
どうすれば「音」を商標として使用しているといえるのでしょうか。興味深いところですね。

「香り」や「触感」については、「音」以上に難しい問題がありそうです。

外国でもこれらの登録例は少なく、客観的な判断基準を作るのは容易ではありません。
また、「香り」や「触感」が商標登録されているか否かを、第三者が確かめることができる方法も確立する必要があります。

「音」、「香り」、「触感」などの『新しい商標』について、権利を取得すべきか否かは、このあたりのことが決まってないからでないと正確な判断はできないでしょう。

今後の動向に注目していきたいですね。

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