著作権法が改正
こんにちは。
iRify特許事務所・弁理士の河合光一です。
今回は商標ではなく、平成24年度の著作権法改正を取り上げます。
主な改正項目は5点ありますが、多くの方に最も関わりがあるだろう「違法ダウンロードの刑事罰化」について説明します。
これに関する規定は、2012年10月1日から施行されます。もうすぐですよ!
改正の経緯
平成21年の改正で、たとえ私的な使用を目的としていても、違法にアップロードされた音楽・映像を違法と知りながらダウンロードする行為は、違法とされました。
しかしながら、罰則はなかったのです。
違法だけど罰せられることはない。
そのため、この改正以降も違法ファイルの流通量は減少しなかったのです。
実際に、CDの売上は1998年からの10年間で3分の1程度になってしまっており、期待された有料音楽配信も伸び悩んでいるようです。
そこで、今回の著作権法の改正では、有償の著作物を違法にダウンロードする行為に対して、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金、又はこれを併科することとされました。
なお、違法ダウンロードでいう「ダウンロード」は、デジタル方式の「録音又は録画」であり、音楽や映画などが想定されています。
刑事罰の対象となる行為の例
ファイル共有ソフトやオンラインストレージで著作権者に無断で提供されている「有償著作物等(※)」を、違法と知りながらダウンロード(録音又は録画)する行為
※録音され、又は録画された著作物又は実演等であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの
- (有償著作物等の具体例)
-
- ●販売されているCD
- ●有料でインターネット配信されている音楽作品
- ●販売されているDVD
- ●有料でインターネット配信されている映画作品
出典:違法ダウンロードが刑罰の対象となることについて知っておきたいこと(文化庁)
刑事罰の対象とならない行為の例
YouTubeの閲覧はセーフ
- ●違法に配信されている音楽や映像の視聴
∵録音又は録画が伴わない。 - ●「You Tube」などの動画投稿サイトの閲覧
∵著作権法47条の8により、「著作権などを侵害した」とならない。 - ●友人からのメールに添付されていた違法複製の音楽や映像ファイルをダウンロードする行為
∵友人が送信したメールは「自動公衆送信」に該当しない。 - ●個人で楽しむために、インターネット上の画像ファイルをダウンロードしたり、テキストをコピー&ペーストする行為
∵録音又は録画が伴わない。 - ●個人で楽しむために、漫画をPDF化したファイルをダウンロードする行為
∵録音又は録画が伴わない。 - ●無料で放送されているテレビ番組の映像ファイルをダウンロードする行為
∵「有償著作物等」に該当しない。
なお、刑事罰の対象ではないものの法律違反となる。
インターネットを楽しめなくなる?
著作権を意識した利用を
違法ダウンロードの刑事罰の規定は、親告罪とされています。つまり、著作権者からの告訴がなければ公訴を提起できません。
また、故意犯のみが対象で、「有償著作物等」であること及び「著作権などを侵害する自動公衆送信」であることを知らないで行った行為は、対象となりません。
さらに、政府及び関係者は,インターネットの利用行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならないこととされています。
よって、悪意のない個人が何の前触れもなく懲役に処せられることは、ほとんどないと考えてよいでしょう。
インターネットを利用する際は、著作物には権利がある場合があることを意識するようにしてください。
●参考資料●
文化庁WEBページ
違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A(文化庁)
違法ダウンロードが刑罰の対象となることについて知っておきたいこと(文化庁)
平成24年度著作権法改正について(日本弁理士会著作権委員会)
●ご注意●
今回の記事は、あくまで参考情報を提供することを目的としており、特定の実際の状況に適用される法的助言を構成しません。著作権法が関わる行為をする場合は、著作権法に明るい弁護士や文化庁などに相談してください。